読売新聞・朝刊に連載された後、
上・下編の二部構成で中央公論新社から同日発売された。
執筆のきっかけとなったのは、
千葉の市川で起こったリンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件。
先に映画を観て、
映画を観たらどうしても原作本が読みたくなりました。
上巻・下巻があり、読み応えがありました。
本には、映画には描かれていなかった部分もけっこうあり、
これだけ長い内容をよく2時間ちょっとの映像に収められたな、
さすがだなと思いました。
人を信じることがいかに難しいことか。
信頼しあっているはずなのに、ふとした隙間から生まれる小さな疑念。
そのほころびが少しずつ大きくなって、グルグルと渦巻きながら大きな疑惑になる。
いや違う、そんなはずない、と打ち消そうとしても…。
もしかしたら……そうかも!?
人の心ってそんな移ろいやすいものなのかもしれない。
信じていた人を疑い、大切な人を傷つけ、愛する人を失う。
失ってから初めて気づく。
そして、怒りは自分に向かう。
犯人の山神の「怒」とはなんだったのだろう…。
己の不遇や生活の不安、社会に対する不満、積もりに積もった小さな怒りの数々。
やがて、自分ではどうにもできないような大きな怒りになり、堰を切ったように溢れ出す。
あのおどろおどろしい「怒」の文字は山神の心そのもの?
それから、
映画では感じなかったけど、本で感じたことですが
他人に言えないこと、隠しておきたいこと、
他人に言ったところで理解してもらえないことなど、誰にでも必ずあると思う。
生まれ育った環境や自分の素性のマイナスの部分はそうそう他人に話せるものではない。
でも、信じようと思ったら、信じる!
信じること。
2016年9月に映画化された。
監督・脚本は、李相日。
主演は、渡辺謙。
李監督が吉田修一の作品を映画化するのは、興行収入19億円超のヒット作となった『悪人』に続き2度目。
『許されざる者』以来のタッグとなる主演の渡辺謙をはじめ、『悪人』で主演を務めた妻夫木聡や三浦貴大、松山ケンイチ、宮崎あおいやオーディションで選ばれた広瀬すず、新人の佐久本宝などが出演している。
映画の公開前のインタビュー記事はこちら。
【怒りはどこに向けられているのか—作家・吉田修一に聞く小説『怒り』の作品世界】
