「母性」をテーマにした作品。
不倫相手の子供を誘拐した女・希和子の3年半の逃亡劇と、
事件後、大人になった子供・恵理菜の葛藤を描く2章から構成される。
出生、愛情、家族などの日常的な要素が、サスペンス調で描かれる。
みんなそんなに不倫しているのでしょうかねぇ…。
と思うくらいワイドショーでもよく話題になる「不倫」。
不倫に溺れるわけないと思う一方で、どんどん深みにはまっていく。
浮気相手の前ではいい顔を見せる男。
その勝手な男に振り回される主人公。
誘拐犯ではあるけれど…、
主人公は誘拐した子に惜しむことのない愛情を注ぐ。
どうか逃げ切って、
安住の地で母娘暮らせるように、
と、いつの間にか感情移入している。
誘拐された娘の薫が家族の元に戻ってからの苦悩の日々。
バラバラになった家族の心はそのままだった。
親子って、家族って…なんだろう。
切ない…。
それでも生きていかなければならないのだ。
運命に翻弄され、否応なく複雑な環境で育った薫。
どうかここで負の連鎖を断ち切って欲しい。
ほかの蝉に見えないものが八日目の蝉に見えるように…。
ラスト、薫と生まれてくる子の未来も…。
美しい小豆島の空と海のようにあれ。
家族とは、母親とは…と考えさせられた作品でした。
2010年にNHKにてテレビドラマ化、2011年に映画化されました。
監督:成島出
主演:井上真央、永作博美
第35回日本アカデミー賞10冠
永作博美さんの表情から伝わる気持ちが痛いほど切ない。
そんな心理描写が丁寧に描かれている作品でした。